12月は年末調整の時期ですが、ふるさと納税を利用すると寄附額のうち2,000円を越える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除され、返礼品が貰えるので大変お得です。
利用しない手はありません。
しかし、控除される額には上限額があるのはご存知ですか?
上限額以上のふるさと納税を行っても持ち出しになるだけ損です。
ふるさと納税の仕組みや計算方法、さらには上限額の計算式をわかりやすく解説致します。
ふるさと納税とは?
ふるさと納税とは何?
※出典元:ふるさと納税の概要【総務省】
ふるさと納税のメリット
通常の寄附金控除との違い
通常の寄附金控除もふるさと納税は、寄附額のうち2,000円を越える部分について、所得税と住民税から控除される制度ですが、割合が異なります。
●通常の寄附金控除
寄附額のうち2,000円を越える部分について、所得税は課税所得金額に応じた所得税率+住民税10%が控除。
●ふるさと納税
寄附額のうち2,000円を越える部分について全額が控除
自治体のメリット・デメリット
自治体は通常、ふるさと納税によって収入が増えます。
しかし、一方で、本来の自分の自治体に入る収入が、ふるさと納税により、他の自治体にいってしまうことで、逆に収入が減るケースもあります。
納税者のメリット・デメリット
納税者の場合、「寄附額のうち2,000円を越える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される」訳ですが、ここだけ見ると、2,000円の赤字です。
しかし、通常、寄付先の自治体が返礼品を送ってくれるので、その分お得になります。
以前は寄付金額の半額の返礼品という時もありましたが、返礼品競争が過熱化した為、現在は上限は寄付金額の3割に抑えられています。
それでも、10,000円の寄付に対して3,000円の返礼品-2,000円=1,000円お得になり、元々の納税額が多い人ほど、多くの返礼品を受け取れるので、大変お得な制度です。
【例】寄付金額10万円の場合、10万円×30%=3万円相当の返礼品を受け取れるので、3万円相当-2,000円=28,000円相当お得です。
ふるさと納税の計算方法
「寄附額のうち2,000円を越える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度」ですが、控除される額には限度額があります。
ふるさと納税で控除される金額
ふるさと納税とは、”元々納税すべき所得税と住民税から、最大で寄附額-2,000円が控除される制度”です。
ふるさと納税の計算
所得税及び住民税は、課税所得金額に税率を掛けて計算されます。
所得税の計算
*所得金額=収入-費用
●所得金額
所得は10種類あり、それぞれ「費用」が異なります。
サラリーマンの場合は、所得金額=給与所得-給与所得控除
●所得控除
所得控除には種類がありますが、独身サラリーマンで親等を扶養していない場合、最低限控除できるのは、基礎控除及び社会保険料控除です。
住民税の計算
本来の所得税・住民税の計算【独身サラリーマンのケース】
仮に年収500万円の独身サラリーマンのケースを考えます。
控除できるのが基礎控除及び社会保険料控除とします。
課税所得
●給与所得
給与所得控除は収入金額に応じて変わります。
※出典元:給与所得控除【国税庁】
年収500万円の場合、給与所得控除額は500万円×20%+44万円=144万円
●所得控除額
・社会保険料:500万円×15%*=75万円
*概算
以上から、課税所得は、
この結果、本来納税すべき所得税と住民税*は以下になります。
*課税所得金額は所得税の計算時に用いるものと若干異なりますが、ここでは同じものとして話を進めます。
●所得税
※出典元:所得税の税率【国税庁】
●住民税
●納税額
※住民税は翌年、納税します。
ふるさと納税の計算
上記の例では年収500万円の独身サラリーマンの納税額は36.85万円でした。
そこで、36.2万円のふるさと納税を行なった場合の計算を行います。
但し、上限金額はひとまず無視します。
所得税で控除される金額の計算
住民税で控除される金額の計算
③+④=36万円
即ち、寄附額のうち2,000円を越える部分について、所得税と住民税から全額が控除されるかに見えます。
但し、ふるさと納税の上限額があるので、注意が必要です。
ふるさと納税の上限額
ふるさと納税の大前提
ふるさと納税とは、そもそも本来納税すべき金額から控除されます。
従って、課税所得=0円の場合、そもそも納税がないので、控除すべきものもありません。
少なくとも課税所得が2,000円を越えていれば、ふるさと納税の恩恵を受けられるかというとそれでも足りません。
以下のケースで考えてみます。
寄付金額5,000円のケース
5,000円のふるさと納税では5,000円-2,000円=3,000円の税金が戻ってきます。但し、5,000円に対する返礼品は3割として1500円。
1,500円<2,000円なので、これでは赤字です。
寄付金額10,000円のケース
10,000円対する返礼品は3割として3,000円。
3,000円-2,000円=1,000円
10,000円のふるさと納税で1,000円得になります。
従って、ふるさと納税は10,000円以上でないとメリットがないということになります。
さて、いよいよふるさと納税の上限額について考えます。
ふるさと納税で控除される税金には所得税と住民税がありますが、課税所得が10,000円以上の場合、所得税が控除されるメリットはあります。
問題は住民税です。
住民税の控除には上限がある
既に年収500万円の独身サラリーマンのケースを考えてみました。
本来の納税額
●所得税
●住民税
●納税額
この納税額に対して36.2万円のふるさと納税を想定しました。
ふるさと納税で控除される金額
●所得税
●住民税
ここで、②と④を比べてみてください。
②<④となり、このケースで控除される住民税の上限は②の値です。
従って、年収500万円の独身サラリーマンが、36.2万円のふるさと納税を行うと、
④32.4万円-②23.3万円=9.1万円の持ち出しとなります。
ふるさと納税額の上限額の計算
ふるさと納税額の上限額は以下の計算式で計算可能です。
※所得税と住民税の課税所得の計算が若干ことなりますので、概算です。
ふるさと納税額の上限額
値の設定
簡略化する為、記号を用います。
ふるさと納税額の上限額の計算
理想的な寄付金額の計算
前述の年収500万円の独身サラリーマンのケースでふるさと納税額の上限額ギリギリの理想的な寄付金額の計算を行います。
I=233万円
TR=10
D円=0.2万円+10×233万円/(100-10)=0.2万円+25.89万円=26.09万円
計算上、理想的な寄付金額は26万円となりました。
検算してみます。
●控除される所得税
●控除される住民税
⑥の金額は本来納めるべき住民税②23.3万円より若干少なく理想的な数字となりました。
ふるさと納税で寄付を行っても、本来納めるべき所得税と住民税以上には控除されません。
実は私、ココは理解しておりましたが、大きな勘違いをしておりました。
しかし、それだけでなく、所得税と住民税には、課税前総所得に対して控除限度額が設定されています。
ここを間違えて、控除額以上の寄付を行っても、控除はされません。
※多分に、「ふるさと納税とは寄付金額-2000円が戻って来る」制度という部分だけを鵜呑みにした結果です。
ふるさと納税額の控除限度額
所得税及び住民税から控除できる金額には限度額が設定されています。
●住民税基本分からの控除限度額:総所得の30%以下
●住民税特例分からの控除限度額:個人住民税所得割額の20%
結論的には、ふるさと納税額が[(個人住民税所得割額×20%)÷(100%-基本分10%-所得税率×復興税率1.021)+自己負担2,000円]を下回る場合において、全額控除を受けられる
ということです。
理想的なふるさと納税額の計算式
上記の計算式により、理想的なふるさと納税額を求める事が出来ます。
ここでは、所得税率が5%、課税前総所得が100万円のケースで、理想的なふるさと納税額を計算してみます。
理想的なふるさと納税額の計算
所得税と住民税を計算する時の元となる課税前総所得の金額は若干異なります。
しかし、ここではそれを無視して話を勧めます。
個人住民税所得割額×20%=⒑万円×20%=2万円
100%-基本分10%-5%×復興税率1.021=84.9%
↓
2万円÷84.9%+2,000円=約25,557円
以上から、所得税率が5%、課税前総所得が100万円のケースで、理想的なふるさと納税額(寄付金額)は、25,000円となります。
通常、ふるさと納税額(寄付金額)の約3割の返礼品を貰えるので、25,000円×30%=7,500円分、得したことになります。
ふるさと納税のおすすめは?
ふるさと納税を紹介するサイトは複数あります。
大手通販サイトの楽天には「楽天ふるさと納税」のコーナーがあり、返礼品をランキング形式で紹介しているので、おすすめのふるさと納税返礼品が分かり、便利です。
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