法定相続人であるにもかかわらず、遺言書に相続人ではない誰かに全財産を遺贈するという公正証書遺言があった場合、相続人は1円ももらえないかというとそうではない。
その為に遺留分という規定が民法にある。
遺留分とは?
民法では、遺言によって、あまりにも相続人が不利益になることを防ぐため、遺産の一定割合を相続人に保証している。
例えば、妻と子供2人が相続人の場合、妻は相続遺産の4分の1、子どもは1人につき8分の1が「遺留分」になる。
ただし、「遺留分」は自動的に相続できるわけではない。
遺言自体が無効になるわけではないので、相続人が「遺留分減殺請求」を行い、「遺留分」を取り返すという形になる。
但し、遺言に納得して「遺留分は不要」という選択もできる。
その場合は、「遺留分減殺請求」を行わなければ良い。
「遺留分減殺請求」の手続き
まずは内容証明郵便で相手側に請求するなどと書いてある解説書が多い。
ただし、遺言書の内容を知ってから1年以内に請求を行う必要がある。
それ以降は請求が出来ない。
この「遺留分」をめぐる訴訟などは多い為、公正証書遺言をつくるときは、あらかじめ「遺留分」を考慮して遺言を作った方が自分の死後、関係者がもめることがないの理想的だ。
遺言で想定しておくべきケース
遺言は満15歳以上なら誰でも作れるし、何回でも書き直せる。
遺言後に事情が変わったら、撤回したり、変更したりできる。
即ち、一番、日付の新しい遺言が有効になる。
では、残したい相手が先に亡くなる可能性があるときはどうするのか?
例えば、夫が遺言者で、「妻へ3分の1を残す」と書いても、妻に先に先立たれた場合、その部分は無効になる。
そういう場合を想定し、あらかじめ「もし、妻が遺言者の死亡以前に死亡したときは、その財産は○○に相続させる」などと、「予備的遺言」を決めておくと良い。
次に遺言する本人が認知症になりそうな場合は、そうしたらよいのか?
認知症などで判断能力がなくなると、遺言自体ができなく恐れがある。
認知症になりそうだったら早めに遺言をしとくと良い。
それとは別に「任意後見契約」と言って、将来、自分が認知症などで判断能力が低下したとき、自分に代わって財産管理などをしてもらう人をあらかじめ決めておくこともできる。
「任意後見契約」も遺言書と同様「公正証書」ですることに法律で決まっている。
遺言業務を委託
最近は、信託銀行が遺言作成のコンサルティングや、遺言書保管、遺言の執行などを、一括して請け負っている。
ただし、まずは自分で調べ、よく考えて取り組むことが大事だ。
(朝日新聞2015年10月31日記事参照)